こんにちは。
個人でヘッジファンド投資をしている、ヘッジファンドオタクの投太郎です。
皆さんのヘッジファンドに対するイメージはいかがでしょうか。
どちらかというと、よくわからないけれども、悪いことをしている貪欲なファンドという印象なのではないでしょうか。
こうした印象は、ある程度、真実でもあり、誤解に基づくものでもあると思います。
ヘッジファンドの実態を紹介することで、こうしたヘッジファンドの実態を理解して、より良い投資を行っていただければと考えています。
また、ヘッジファンドの社会的意義についてもご紹介することで、より深い理解を目指していきたいと思っています。
1-1 ヘッジファンドは貧乏人から搾取している?
ヘッジファンドが貧乏人から搾取しているということは、基本的にありません。
ヘッジファンドの投資対象は、株や債券などの伝統的な資産に加えて、デリバティブ(金融派生商品)です。
このため、基本的に投資対象としては一般の金融機関などと大きな差はありません。
直接的には貧乏人から搾取するということは困難です。
富裕層のための運用を行っているために、富裕層のみに利益が分配される形で格差の拡大の一翼を担っているとの批判もあります。
この点は、両面あると考えられます。
確かに、ヘッジファンドは、富裕層を中心に資金を集めることが多い業態ではあります。
しかし、それと同じく、年金基金など一般の従業員の退職金や公的な資金を運用することも多く、より一般の人々の資金を増やすという仕事もしています。
それでも、確かに資金によって新しい資金を増やすという性質の側面はあるために、その収益率が高ければ高いほどに、格差を拡大させるような作用をもたらします。
このように考えると、ヘッジファンド自体は、富裕層であれ年金基金であれ、多くの投資家から資金を集めて、利益を分配するという機能を持ちます。
この機能自体は、直接的に貧乏人から搾取するという目的を持っているわけではありません。
しかし、一般の投資家が、ヘッジファンドに投資をすることなく高い収益率を逸する形となるのであれば、結果として、貧富の差を拡大させる作用を持ってしまうと考えられます。
このため、多くの一般の投資家がヘッジファンド投資を理解し、リスクの範囲内で分散投資の一部として取り入れることが望ましいと考えられます。
私はBMキャピタルというヘッジファンドに投資しています。
平均利回り10%以上!にもなっています。
1-2 ヘッジファンドは市場に影響を与えているのか
多くの一般の方は、ヘッジファンドが市場を動かしているのではないかと考えているかもしれません。
この点も、一概にヘッジファンドが市場を動かしてしまっていて、悪であるとは言いきれないと考えられます。
まず、ヘッジファンドや機関投資家の多くは基本的に市場をなるべく動かさないように取引を行います。
理由は、マーケットインパクトにあります。
マーケットインパクトは、狙っていた取引から変化してしまった価格のことなので、自分の取引で自分の取引コストを引き上げてしまうことになります。
多くのヘッジファンドや機関投資家は、なるべくマーケットインパクトを出さないように、取引時間や日時などに最大限留意して、流動性のなるべく高い市場で取引することが多いようです。
一方で、市場に影響を与えてしまうようなヘッジファンドも存在することは確かです。
その代表的なスタイルが、CTA(Commodity Trading Advisor)戦略です。
マネージド・フューチャーズとも呼ばれます。
これらの戦略は、オプションや先物などのデリバティブを使い市場の値動きに沿ったポジションを構築するトレンドフォロー戦略を基本としています。
このため、例えば株価が上昇した場合、さらに株式を購入するポジションを構築することが多いため、上昇している株価をさらに押し上げるような影響を与えます。
逆も同様で、株価が下がるとCTA戦略は株式を売る投資行動を取るために、下がった株価をさらに押し下げるような影響を与えます。
こうした、CTA戦略の影響は、市場流動性が低い状態ではそれなりにインパクトを与えていると考えられており、ヘッジファンドが市場を動かすことがある、一番良く知られる例だと思います。
中には市場に影響を与えるスタイルでトレードをしているヘッジファンドもあるということですね。
1-3 実は一般のデイトレーダー・個人投資家の影響もでかい
近年では、ヘッジファンドよりも一般のデイトレーダーの方が、影響が大きいと言われています。
例えば、近年ではミーム(MEME)株と呼ばれる、投資掲示板やSNSを中心に情報が拡散して人気化した銘柄の暴騰、暴落が市場を動揺させていることは、多く報道されています。
このほか、為替市場における日本の個人投資家の総称である「ミセス・ワタナベ」も、大きなレバレッジにより、特にドル円市場にボラティリティをもたらすことが知られています。
また、日本の個人投資家の資金力も非常に大きいことが知られていて、過去の事例では、人気化した高金利国通貨建て投資信託の影響で、当該国の通貨が高騰してしまったことがあります。
このように、ヘッジファンドと同様に、デイトレーダー・個人投資家も特定の投資の癖があることが知られており、こうした投資の癖が、市場を大きく動かし、時には、市場価格を歪めてしまう原因となってしまいます。
1-4 ヘッジファンドが行なっている「空売り」は悪なのか
ヘッジファンドが行っている「空売り」は悪なのでしょうか。
例えば、1992年にイギリスポンドをジョージソロス率いるクォンタムファンドが空売りを仕掛けた例で考えてみましょう。
この時、ジョージソロスは、イギリスポンドとドイツマルクを事実上固定するESM(欧州通貨制度)とERM(欧州為替相場メカニズム)が維持不可能であると考えていました。
これは、相対的にイギリス経済が脆弱であり、ドイツの中央銀行であるブンデスバンクが維持したい金利水準を、イングランド銀行が維持できないと考えていました。
このため、イギリスポンドに大幅な空売りを仕掛けました。
結果として、ジョージソロスやその他の追随するヘッジファンドによる空売りにより、イギリスは金融政策を維持できなくなり、英国政府はERMからの脱退を表明する事態となってしまいました。
これは、英国政府や英中銀にとっては非常に屈辱的な出来事であったかもしれません。
しかし、英国経済にとっては逆の作用をもたらしました。
もともと、英国政府やイングランド銀行にとって、ESMやERMは負担に高い金利や割高な通貨として負担になっていました。
これをジョージソロスが是正したことにより、自由な金融政策を手に入れたことによって、英国経済は回復することになりました。
仮に、ジョージソロスによる通貨攻撃が無く、そのままイギリスがユーロおよびECBへの通貨統合、中央銀行の統合を行っていた場合、イギリスの現在のような発展は無かった可能性が非常に高いです。
これは、ユーロによる実力以上に高い通貨の影響も十分に製造業を中心に厳しい影響を与えたと考えられます。
しかし、より重要なのは、ECBによる自由度の無い金融政策は、世界の金融センターであるロンドンを擁するイギリス経済にとって、相性が非常に悪く、相当程度の悪い影響を与えたであろうことは容易に想像できるところです。
このように、ヘッジファンドによる空売りは、そもそも過大評価されてしまっている資産価格を適正に低下させる効果があると考えられます。
この過大評価の是正は、短期的には痛みを伴うこともあるかもしれませんが、経済全体として見た場合、むしろ望ましい場合も多いと考えられ、ヘッジファンドは一定の社会的意義を持った存在であると言えるでしょう。
1-5 ヘッジファンドは租税回避をしているから悪??
ヘッジファンドの多くは、ケイマン諸島など租税回避地にファンドの籍を置いています。
これは、ファンドの租税の問題ではありますが、ヘッジファンドは横並びでパフォーマンスの優劣が決まるために、租税回避地にファンドの籍を置くことは不可避な問題となります。
また、ファンド運用会社についても、税金面での利点に加えて、金融規制や法的なコスト、人材確保の観点から、シンガポールや香港、スイスなどに本社を構える場合が多くなります。
この場合、運用会社は当該国の税金を納めることになります。
このため、ヘッジファンドは納税自体は行っており、全くの租税回避というのは誇張した表現であると言えます。
2 ヘッジファンドがハゲタカと呼ばれる理由とは?
日本において、ヘッジファンドのイメージが大幅に悪化した事例としては、リップルウッド・ホールディングスが1998年に破綻した日本長期信用銀行に対する投資で、大儲けした案件が記憶にあるのではないでしょうか。
日本長期信用銀行は日本政府から8兆円にものぼる公的資金を注入されていましたが、2000年に企業再生ファンドを運営するリップルウッド・ホールディングスを中心とする投資組合に10億円で売却されました。
その後、リップルウッド・ホールディングスは日本長期信用銀行に1000億円以上にのぼる資金を投入し、新生銀行として2004年に東京証券取引所に再上場させることに成功しました。
この時、リップルウッド側は5000億円以上にのぼる利益を獲得したと言われています。
リップルウッド・ホールディングスが運営する再生ファンドは、いわゆるバイアウトファンドの一種です。
こうしたファンドは、PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)と言われる投資カテゴリーに分類されることが多いのですが、一般には広義にヘッジファンドであると認識されているようです。
この時、リップルウッド・ホールディングスは、政府に簿価での債権買取を請求できる瑕疵担保条項を利用したり、新生銀行株式の譲渡益が非課税であったことなどから、リップルウッド側を称して、ハゲタカファンドという呼称が定着したと言われています。
こうした、PEファンドは本当にハゲタカなのでしょうか。
その評価は非常に難しい部分があります。
リップルウッド・ホールディングスについて言えば、実際に1000億円以上にものぼる資本投資をリスクを取って投入し、再上場を果たしたという実績は事実としてあります。
その後も、日本テレコムをソフトバンクへと売却した実績があることも事実です。
一概にPEファンドが、良いものなのか悪いものなのかということを断定することは、難しいですが、その存在感は増していることは事実です。
特に、近年は不良債権処理を行い企業価値を短期的に高めるという手法よりも、企業再生、海外展開など中長期的な企業価値向上を目指したファンドが活躍してきており、日本の大手企業も非中核事業の売却先にPEファンドを選ぶ事例が見受けられるようになっています。
3 今回のまとめ
ヘッジファンドは社会にとって悪なのでしょうか。
この点、詳しく紹介してきました。
ヘッジファンドは、適正な価格形成を促すという効果があるために、健全な金融市場を形成するという意味において、大きな意味があります。
加えて、広義のヘッジファンドの一部であるPEファンド、再生ファンドは、一時期「ハゲタカ」と呼ばれていた時代もあり、利益を短期的に追求する社会悪だと考えられていました。
しかし、近年では、長期的な企業価値を高めるノウハウや資金を持った重要な経済主体であると考えられてきているようで、社会にとって重要な役割を担っているのは事実のようです。
ヘッジファンドは、貧乏人から搾取をするような構造を直接的には持っていません。
しかし、その高い収益のために、資金力のある富裕層のみが投資を行えば貧富の差の拡大を助ける作用を持ってしまいます。
このため、一般の投資家もリスクの範囲内においてポートフォリオの一部にヘッジファンドを組み入れていくことが重要であると考えられています。
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